企業とってのマタハラ防止は、働き方改革へとつながる

私は、2017年にマタハラ防止が企業に義務化されるよう、けん引してきました。
マタハラ防止をきっかけに、企業の「働き方改革」に繋がって欲しい、と考えたからです。

私は、企業にもマタハラ防止研修をしてきました。
そのなかで、マタハラは「働きかたへのハラスメント」と伝えて来ました。

産休・育休で長期の休みを取る、復職しても保育園のお迎えで時短勤務を取得するという働きかたは「異なる働きかた」として排除の対象になってきました。
なので、マタハラは、セクハラ・パワハラのようなモラルに関する問題だけでなく、「働きかたの問題」といえるのです。

私は、「マタハラ問題」を「働き方改革」とセットで唱えました。
「マタハラ」は女性の人権問題だけでなく、企業の経営問題・経済問題だと呼びかけました。

私が調査した、企業の経営者・管理職を対象にしたアンケートでは、
「産休・育休を取得する社員がでると、その社員の業務は周囲の社員が負うことになる労働環境だ」という質問に対し、「とてもそう思う」「まあそう思う」が合わせて約7割に達しました。

産休・育休を取得する社員がいる一方で、周囲の社員の業務負担が増大するという実態が浮かび上がってきました。
では、休業した社員のフォロー分が評価や処遇に反映されているでしょうか。

調査結果では、多くの企業で人事評価や金銭的報酬への反映は「何もない」という回答でした。
結果的に、フォローする側の社員は業務負荷が高まるばかりで、なんら報われていないことになります。

これでは「逆マタハラだ!」という声が上がっても不思議ではありません。

そして、ここにマタハラ解決のポイントがあるように思います。
産休・育休を利用する社員だけでなく、そうした社員をフォローする側に回る社員にも目を向け、お互いWin-Winの関係が築けなければ、フォローする側にとっては産休・育休を利用する女性は迷惑な存在でしかありません。

結果的に仕事に追われて余裕のない職場では、妊娠は個人的なこととみなす風潮がマタハラを生むことになります。

では、どのようにすれば制度を利用する側とフォローする側がWin-Winの関係を築いていけるのでしょうか。
具体的には、フォローする上司・同僚の評価の見直し、フォロー分の対価の見直し、結婚や妊娠を望まない社員にも長期休暇制度の導入なども検討の余地があるでしょう。

また、産休・育休の取得で休業者分の人件費コストが浮くのであれば、その分をフォローする部署内で再分配するルールをつくり、フォローする側の業務負担に報いるという仕組みがあってもよいように思います。

そして、そもそも長時間労働の職場では、誰かの業務のフォローなどとてもできません。
長時間労働の是正が土台として必要です。
ですので、マタハラ防止をきっかけに、企業の「働き方改革」に繋げて行って欲しいです。

横浜市会議員:おさかべさや

【関連記事】

・日本の人事部
マタハラを克服すれば企業は強くなれる 人事担当者が知るべき、本当のマタハラ対策とは
(前編)https://jinjibu.jp/article/detl/keyperson/1561/
(後編)https://jinjibu.jp/article/detl/keyperson/1562/

・日経xwoman
“マタハラはなくて当たり前” の企業はココが違う
https://woman.nikkei.com/atcl/dual/pwr/078/10

・日経ビジネス
マタハラは人権問題であるだけでなく経済問題
https://business.nikkei.com/atcl/interview/15/238739/012000121

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