少子化問題、カギを握るのは男性

男性育休の議論がされるようになって久しい。
最近も福岡市の男性職員の育休取得率が、100%を達成したとありました。
全国の政令市で取得率が100%となるのは初とのことですが、大事なのは取得率より日数なはずです。

たった数日取得してもパーセンテージに含まれるため、1日や2日取得させて男性育休80%、などと語る企業や組織は少なくありません。
就職や転職の際に、こうした看板に騙され、入社してみたら全く違った、というケースも多くあります。

読売新聞
福岡市の男性職員「育休取得100%」達成…政令市で初の見通しhttps://news.yahoo.co.jp/articles/7eeca8f9a55a7406386310ea86e6495169d9dff9

2021年時点では、共働き世帯が約7割に達していますが、男性の家事・育児の時間は低いままです。
もちろん、年々増加傾向にはあるものの、依然として女性に比べて低い水準にあります。
特に、育児に関しては、妻の負担が大きくなる傾向が顕著です。

男性の家事・育児への積極的な参加は、第二子以降の出生率を高める傾向があるという調査結果があります。
また、夫の家事・育児時間が長いほど、出産後の妻の就業継続割合も高くなる傾向があります。

このような話を、10年ほど前から私はし続けています。

(2016年1月18日、NPO法人ファザーリング・ジャパンが開催したFJ★緊急フォーラム「どうなる? 議員の育休〜永田町が変われば、日本の子育て・WLBが変わる」に登壇)

(フォーラム会場の様子)

男性の「産休」、正式名称は「出生時育児休業」または「産後パパ育休」が、2022年10月より施行されました。
これは、男性が子どもの出生後8週間以内に、最大4週間の育児休業を取得できる制度で、一般的に「男性版産休」と呼ばれます。
従来の育児休業とは別に取得できるもので、分割して取得することも可能です。

制度は整って来ているものの、日本はまだまだ男性の育休取得率は低く、2023年度の男性の育休取得率は30.1%でした。
本来は取得率ではなく中身が重要であるものの、冒頭の福岡市の100%がニュースになるのも頷ける状況にあります。

そんな中、今回(2025年)の参院選で、一部の政党が残業時間の規制緩和につながる公約を掲げていました。
自民党も「個人の意欲と能力を最大限生かせる社会を実現するため『働きたい改革』を推進し、人手不足の解消に努める」と明記していました。

これは、長時間労働による過労死などの弊害を容認する社会へと逆戻りし、少子化をさらに加速させるものと、危惧します。

私も業界団体へのヒアリングで、人手不足、若手不足、を胸が痛むほど聞いています。
ですが、だからといって、全ての人が安心して働くための「働き方改革」は前進させなければなりません。
問題解決は、新しい仕組み、新しい視点で乗り越えて行くべきだと思います。

損保大手の三井住友海上火災保険株式会社では、育休を取得する人がいると、その職場全員に「育休職場応援手当(祝い金)」が支給される制度を2023年4月から導入しました。

日経BP
同僚への「祝い金」で男性の育休連続取得日数が増加 三井住友海上火災保険https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00095/062700007/

育休取得者をフォローする同僚への評価・対価を見直して欲しい、と私は以前より言っていたので、このような記事はとても嬉しいです。
三井住友海上では、男性の育休取得率は100%だが、連続取得日数が伸びない、という課題を抱えていたそうです。同僚に支給される「祝い金」の制度で、この課題を打破したとのこと。

こういった新たな取組みをしてくれる企業が増えることを願っています。

◆News Picks
【男性育休4】少子化問題、カギを握るのはむしろ男性
https://newspicks.com/news/1366632/body/

◆サイボウズ式
「どうなる? 議員の育休」──宮崎議員と男の育休を語るhttps://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001084.html

◆共同通信
「働かせたい改革」に企業抗議 参院選、残業規制緩和巡りhttps://news.yahoo.co.jp/articles/985093ede53b210b67e9f2dfac6c7495dd732fa8

◆Yahoo!個人ニュース
新制度の「男性 出生時育休」とともに検討して欲しい周囲の社員の人事評価・対価とペア制度。事例をご紹介https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b3efa5b530878bb8399dbc4ecd3d633dc4400144

◆Yahoo!個人ニュース
男性育休「義務化」の議論とともに見直してもらいたい、そもそもの制度の使いづらさhttps://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6cc813d7d2043a1c258aa1de8cf5fa642be16925

◆Yahoo!個人ニュース
カネカショック!その転勤必要ですか?違法性はないのかパタハラ疑惑を解説https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/54529dd1706e58a3747b896650642d26053372c5

◆Yahoo!個人ニュース
男性コンサルタントが経験して語る、育休制度の使いづらさと使用時のノウハウhttps://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8ec247be75f9e641fcbdeac12ac221c4a375f562

関連記事